ピロリ菌検査について
ピロリ菌とは正式にヘリコバクター・ピロリ菌といい、らせん状の細長い形をして、片側に数本のべん毛(ひげのようなもりの)を持った細菌です。この細菌が胃の粘膜に感染すると、ヘリコバクター・ピロリ感染症になります。このピロリ菌への感染は、慢性胃炎の原因となり、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、さらには胃がんを引き起こす危険性もあります。
日本人はピロリ菌に感染している比率が高く、60歳以上の約8割が感染しているとされていましたが、現在は衛生環境の改善等から、減少傾向にあり、若い世代では低い感染率となっています。免疫システムがまだ十分に発達していない、主に4歳以下の乳幼児の時期に感染すると言われており、ピロリ菌に感染した大人からの口移しや、糞便に汚染された水や食物が感染経路ではないかとみられています。
ピロリ菌は胃の粘膜に感染すると、胃酸の強い酸性の中でも生き延びるため、ウレアーゼという酵素を使って、胃の中の尿素を分解し、アンモニアと二酸化炭素を産出しし、胃酸を中和しようとします。このアンモニアの刺激などで胃の粘膜が傷つき、さらにピロリ菌が胃を守ろうと免疫反応が起こります。これにより炎症が起こり、その状態が長く続くと慢性胃炎になってしまいます。慢性胃炎を放置しておくと、胃酸や胃液を分泌する組織が減少、胃の粘膜が萎縮して薄くなる「萎縮性胃炎」に進行し、これが胃がんなどに発展するリスクをもたらしてしまうのです。
胸やけがする、胃の上部に痛みや不快感があるといった症状が続く場合は、慢性胃炎の可能性があります。その場合、まずピロリ菌に感染しているかどうかも疑ってみる必要があります。当院では、ピロリ菌の検査を実施しています。また、万が一、ピロリ菌の存在が認められた場合、ピロリ菌の除菌も行っています。
ピロリ菌検査については、胃カメラ検査で胃炎が見つかった場合、内視鏡検査または胃X線検査で胃潰瘍・十二指腸潰瘍と診断された場合、突発性血小板減少性紫斑病と診断された場合のいずれかで、保険適用となります。それ以外では自費(全額自己負担)となってしまいますが、できれば、いま自覚症状がなくても、たとえばご家族に胃がんになった方がいらっしゃる場合など、将来のリスクを軽減できますので、検査を受けることをお勧めします。
ピロリ菌検査には、胃カメラ(上部消化管内視鏡)を用いる方法と、用いない方法があります。
内視鏡を用いる方法
培養法
内視鏡を用いて採取した胃の粘膜をすりつぶし、ピロリ菌の発育しやすい環境において5~7日間観察し、ピロリ菌の有無を調べます。この方法では、そのピロリ菌の除菌に効果のある抗菌薬も同時に調べることができます。
迅速ウレアーゼ試験(通常)
ピロリ菌が持つウレアーゼという酵素は、尿素からアンモニアを生じさせます。これを利用し、採取した胃の粘膜に尿素を含んだ試薬を反応させ、色の変化によって判定します。
鏡検法
採取した胃の粘膜の組織標本に、特殊な染色を施し、その後、顕微鏡で直接観察して、ピロリ菌の有無を確認します。
内視鏡を用いない方法
尿素呼気試験
診断薬を内服した状態と、内服しない状態で、それぞれ息を吐いて採取し、呼気の中のピロリ菌の酵素・ウレアーゼによって産出された二酸化炭素の量を測定し、判定します。この方法は、簡易で精度が高いため、主流の検査法となっています。
体検査(血液検査)
ピロリ菌が感染したことで作られた、血液中や尿の抗ヘリコバクター・ピロリ抗体を測定し、その値の高さで判定します。
糞便中抗原測定
糞便中にピロリ菌の出す毒素や菌の成分(抗原)の有無を調べ、胃腸内にピロリ菌がいるかどうか判定します。
※検査法に関しては、現在治療中の病気の有無や、服用中の薬の種類なども関係する場合がありますので、患者さんに合わせて選択します。胃カメラ検査をする場合、同時に行うことも可能です。
ピロリ菌が発見された場合、当院ではピロリ菌の除菌も行います。胃潰瘍・十二指腸潰瘍、胃がんの原因ともなりますので、除菌することを強くお勧めします。
ピロリ菌の除菌では、3種類の内服薬を用います。ひとつは胃酸の分泌を抑える、ランソプラゾールやオメプラゾールといったプロトンポンプ阻害薬、そして「アモキシシリン」「クラリスロマイシン」のふたつの抗生物質です。これらを1日2回、7日間連続して服用します。これで約70~90%の方が除菌に成功します。
不成功となった場合は抗生物質を「アモキシシリン」と「メトロニダゾール」に変えて、二次除菌を行います。さらに効果が見られなかった場合は抗生物質の組み合わせを変え、三次除菌を行う場合もあります。
※二次除菌までは保険適用ですが、三次除菌以降は保険適用外となります。